本来は多少なりとも知識を得て、その場に望むべきなのだがプロジェクトのレビューの資料を100ページ作っていたので、プライベートの知識収集までしている時間は皆無で。まさにWeb記載のHowtoそのままの体験を無知のまま体験することとなった。「中古物件の売買では、たいてい売主、買主、媒介業者、司法書士、金融機関などが一堂に会して、その場ですべての金銭のやり取りを行ないます。」なるほど、まるで、その様はジェットコースタームービーのよう。不動産売買に興味の無い自分は、ただのハンコ押しロボットである。読んだ書類と言えば、マンションの規約くらい(笑)ということで、書類と鍵が渡されて終わりとなる。
さて話は自分の仕事のプロジェクトの話に戻る。マンションの決済、引渡しの前日、私のプロジェクトのレビューを開催して節目を迎えた。私がゼロから始めて心血注いで作り上げた、宝石のようなシステムは無事完成して順調に動いている。レビューの八割はgoodな評価である。でも、本プロジェクトはレビューの前からクールダウンというストーリーになっていたのである。
例えるなら、F1に参戦しているチームのR&Dセクションで自社開発エンジンを作った。そのエンジンは現在搭載しているものに遜色もないし、良いところがいっぱいある。でも、まだレースでの実績はないし、来年のレギュレーションにすぐさま対応できる技術はまだない。最高責任者は言った、実績ある大メーカーのエンジンを搭載すると。ちょっとひねた考え方であるが、会社は、そんな簡単には作れないと思ってたに違いない。たった二年で具現化できてしまうとは思わなかったんだと思うな。だから始めるときに簡単に研究を始めて良いと言ってGoサインをだした。でも、できてしまって、その構築してしまった技術の取り扱いに困ったのではないかと思う。
残念無念?いやいや、始めたときから分かっていた。そんなこと。要素技術をゼロから構築して商品に近いプロトタイプを作っただけでは事業の要を変える事ができないなんてことは分かっていたのさ。会社のストーリーを変える為には、一回だけ勝てる仕組みでは駄目で、会社がその後も十分に安心して拡張できるストーリーの提案が必要である。踊る大捜査線で言えば、刑事事件だけが現場主導で上手く回ったとしても、それでは駄目で日本の社会全体で見て、現場主導化をさせたときに本当に安定した社会が成り立つ保障が必要で、必ず上手くいく仕組みが必要なのである。
私の宝石が世に出るのは、まだまだ遠い道のりが待っている。でも、この二年の月日は技術者の端くれとして楽しかったし、満足である。全力も尽くした。今思うと、心が枯れそうになり、体力も尽き果ててもやり抜いた。その過程は本当に楽しかった。技術屋さん人生16年の集大成である。さて、これからは新しい戦いのストーリーを練らねばなるまい。最後に自分に言わせれば、今、思えば社内の誰もが作れないなんて思っていることなんか、どーでもよいことで、類似するものが、世の中に存在していれさえすれば、自分はゼロからでも構築するなんていとも簡単なことであった。これから自分がすることは、私の宝石を輝かせることかできる仕組み作りである。うむ、あと3年は石にかじりついてでもやり抜こう。