ADV160で走る、能登半島1046km・3日間の記録

「ちょっと狼煙に行ってくる」
そう言うには、名古屋から能登半島の先端は少し遠い。
いや、少しどころではない。
それでも地図を眺めていると、能登半島の最北端、狼煙という地名がどうにも気になってくる。
半島の先端。海に突き出た土地。そこへ向かう道。
バイクで走る理由としては、それだけで十分だった。
今回はADV160で、名古屋から能登半島を西側から上がり、輪島で一泊。
翌日は能登の北側から東側へ抜けて富山へ。
そして最終日は、安房峠と野麦峠を散歩するように越えて名古屋へ戻る、3日間のツーリングとなった。
旅のデータ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 合計距離 | 1046km |
| 日数 | 3日 |
| 走行時間 | 24時間47分 |
| 平均燃費 | 43.4km/L |
| 平均速度 | 42.2km/h |
| 使用燃料 | 24.1L |
日別のルートは以下の通り。
| 日程 | ルート | 距離 |
|---|---|---|
| Day1 | 能登ツーリング西側:名古屋 → 輪島 | 386km |
| Day2 | 能登ツーリング北と東側:輪島 → 富山 | 285km |
| Day3 | 安房峠と野麦峠の散歩:富山 → 名古屋 | 375km |
3日間で1046km。
ADV160としてはなかなか走った方だと思う。
ただ、走行時間は24時間47分。
平均速度は42.2km/h。
高速道路をひたすら移動した旅ではなく、海岸線、峠、集落、道の駅、温泉を拾いながら進んだ旅だった。
Day1
名古屋から能登西側へ、そして輪島へ

初日は名古屋から輪島まで、約386km。
能登半島へ向かう道のりは、どうしても移動距離が長くなる。
それでも、日本海側へ近づいていくにつれて、旅の気配が濃くなっていく。
道の駅に寄り、海岸線を眺め、徐々に能登へ入っていく。
半島を走る感覚は独特だ。
地図上では細長く見えるが、実際に走ると起伏があり、海沿いの道も山側の道も表情が変わる。
そして輪島へ。
今回の宿は、輪島のゲストハウス。
平日にもかかわらず満室で、能登という土地に今も多くの人が出入りしていることを感じた。
輪島市内では、復興の途中にある風景も目に入る。
仮設住宅、工事中の道路、手が入れられている建物。
観光として通り過ぎるだけではなく、今この土地で日々を続けている人たちがいることを、静かに受け止めながら走った。
夜は輪島の温泉、七ノ湯へ。
旅先で入る温泉は、ただ汗を流すだけではない。
その土地に少しだけ身体を預ける時間でもある。
一日走った後の湯は、やはり格別だった。
Day2
輪島から狼煙へ。能登の北と東を走る

2日目は、輪島から能登半島の北側へ。
この日の目的地は、今回のテーマでもある狼煙。
能登半島の先端へ向かって走る。
白米千枚田、曽々木、禄剛崎方面。
海沿いの道、崖のある風景、ところどころに現れる集落。
半島の先へ進んでいる実感が強くなる。
狼煙という地名には、やはり特別な響きがある。
「ちょっと狼煙に行ってくる」と軽く言って出てきたものの、ここまで来ると、ちょっとでは済まない距離を走ってきたことがわかる。
でも、その少し無茶な距離感がいい。
バイク旅は、効率だけで組むものではない。
地図の端にある地名を目指す。
行ったことのない道に入る。
天気や風や路面の変化を身体で感じる。
そういう非効率の中に、ツーリングの美味しい部分がある。
狼煙からは、能登の東側へ回り込む。
見附島、能登島大橋、ツインブリッジ、ガラス美術館周辺など、能登らしい景色をつないでいく。
そして富山へ。
この日は約285km。
距離だけ見れば初日より短いが、見どころはかなり濃い。
海岸線を丁寧に拾うと、数字以上に満足感がある。
夜は富山で、古洞温泉へ。
深層温泉という響きも良い。
走って、見て、湯に入って、また明日のルートを考える。
この繰り返しが、旅のリズムになっていく。
Day3
富山から名古屋へ。ただ帰るだけでは終わらない

最終日は富山から名古屋へ。
距離は約375km。
普通に帰るなら、もっと楽なルートもある。
けれど今回は、ただ帰るだけでは終わらせない。
安房峠、平湯、野麦峠、そして御嶽方面へ。
帰路というより、最後にもう一度山の道を味わって帰るルートだ。
まずは平湯へ。
ここで入ったのが、平湯の湯。
公共露天風呂らしい素朴さがあり、旅の途中に立ち寄るにはちょうどいい。
豪華な温泉宿ではなく、走る人がふらりと寄って身体を温めるような湯。
こういう温泉が、ツーリングにはよく似合う。
その後は野麦峠方面へ。
山の中を抜ける道は、能登の海沿いとはまったく違う表情を見せる。
海から山へ。
半島から峠へ。
3日間の中で景色の振れ幅が大きい。
そして最後に、濁河温泉 市営露天風呂へ。
御嶽の山中にある濁河温泉は、今回の温泉巡りの締めにふさわしい場所だった。
ここまで来ると、もはや帰り道の寄り道というより、目的地のひとつだ。
湯に入って、身体を整えて、名古屋へ戻る。
最後までしっかり走り切った。
今回巡った温泉
今回のツーリングでは、3日間で4つの温泉を巡った。
| 温泉 | 場所 | 印象 |
|---|---|---|
| 七ノ湯 | 輪島 | 能登の夜に入る、旅情のある温泉 |
| 古洞温泉 | 富山 | 深層温泉。富山泊の締めにちょうどいい |
| 平湯の湯 | 平湯 | 公共露天風呂らしい素朴な魅力 |
| 濁河温泉 市営露天風呂 | 御嶽 | 山中の秘湯感があり、旅の締めに強い |
やはり、ツーリングと温泉の相性は抜群だ。
走る。
冷える。
汗をかく。
疲れる。
そして湯に入る。
その瞬間に、今日の道の記憶が身体の中でほどけていく。
温泉は、旅の句読点のようなものだと思う。
ADV160で1046km走ってみて

ADV160で3日間1046km。
改めて、このバイクの旅性能はかなり高い。
高速巡航だけを考えれば、大排気量車の方が楽なのは間違いない。
しかし、能登の海岸線や峠道、細い道、寄り道の多いルートでは、ADV160の軽さと扱いやすさが効いてくる。
燃費は平均43.4km/L。
使用燃料は約24.1L。
1046km走ってこの燃料消費なら、旅のコストもかなり抑えられる。
そして、スクーターでありながら荷物も積める。
メットイン、リアボックス、サイドバッグを使えば、数日の旅なら十分に成立する。
何より、気負わず走り出せる。
これが大きい。
「ちょっと狼煙に行ってくる」
そう言って本当に走り出せる気軽さ。
でも気づけば1000kmを超えている。
ADV160は、そういう旅の距離感を少しおかしくしてくれるバイクだ。
能登を走って感じたこと

能登は美しい。
海岸線も、棚田も、半島の先端へ向かう道も、橋も、集落も、どれも印象に残る。
一方で、復興の途中にある現実も見えた。
工事中の道、仮設住宅、まだ手が入っていない場所。
その風景を前にすると、簡単な言葉ではまとめられない。
だからこそ、行ける場所へ行き、泊まり、食べ、温泉に入り、道の駅で買い物をする。
それもまた、旅人としてできる関わり方のひとつだと思う。
もちろん、通行止めや立入禁止は守る。
現地の生活や復旧の邪魔をしない。
そのうえで、今の能登を自分の目で見ることには意味がある。
まとめ
「ちょっと」のつもりが、1046kmの濃い旅になった

今回の旅は、タイトルだけ見れば軽い。
ちょっと狼煙に行ってくる。
けれど実際には、3日間で1046km。
能登半島の西、北、東を走り、富山へ抜け、最後は安房峠と野麦峠を越えて名古屋へ戻る、かなり密度の高いツーリングになった。
海を走り、半島の先端へ向かい、温泉に入り、復興途中の街を見て、最後は山の峠を越える。
こういう旅は、ただの移動ではない。
地図の上に自分の線を引いていく行為だと思う。
そして、その線がまた次の旅を呼ぶ。
狼煙まで行った。
能登を走った。
温泉を4つ巡った。
1046km走った。
でも、きっとまた地図を見れば、次の場所が気になってくる。
だからまた、そのうち言うのだと思う。
ちょっと、どこか行ってくる。
今回のルート
