子育て一覧

もう一つの可能性、選択肢

そろそろ35年目のシーズンインが始まる。

もし、私が独身だったら。

もし、家や家族を持たなければ。

高級な外車のオートバイを何台も所有し、エンジンの進化を味わい尽くし、最新技術の粋を極めることができただろうか。そんな思いが頭をよぎることがある。それは夢の世界の話なのか、それとも、もう一つの可能性として存在していた現実なのだろうか。

16歳の頃にオートバイに魅せられ、18歳からはレースや練習会に参加した。毎日スロットルを開け、フルブレーキングを試し、理想のセッティングを探し求める——それが私の青春だった。それから休憩したこともあるが35年以上続けていても、今でも、まだ知らないこと、できないことは山ほどある。エンジンの特性を理解し、セットアップや構造を変え、試行錯誤を重ねる。もし時間と資金がもっと自由に使えたなら、そのすべてを追求し続けることもできたかもしれない。

私には、すべてのエンジン形式を乗りこなしたいという夢があった。過去には2サイクル単気筒や4サイクルの様々なタイプを所有し、そのフィーリングを楽しんできたけれど、V型2気筒、L型3気筒など、まだ体験していないものも数多くある。試乗程度なら経験はあるが、全開でスロットルを開け、ブレーキングを試し、徹底的にセットアップして走る——そこまでの追求には至っていない。

かつて、私はレースにすべてを捧げた。その時に選んだエンジンは、最も機能的で勝つために必要なものだった。その選択は間違っていなかったし、結果としてタイトルをも獲ることもできた。だからこそ、私は誇りを持って勝つための道具としてエンジンを選択する、その道を進んだと言える。ただ、一方で勝つことにこだわりすぎるばかりに、エンジンの多様なフィーリングを味わうという楽しみを手放していたことにも気づく。もし、もっといろいろなエンジンを試していたら、また違った楽しみがあったのかもしれない。とはいえ、後悔しているわけではない。その時その時、最善を尽くした結果として、造形深く、今こうして違う視点から新たな興味が湧いているのだから。

また私は家族を持つという選択をした。それは、私自身がその時、その年齢で、等身大の自分の意思でしっかりと決めたことだ。35歳を過ぎたとき、私は人生の転機を迎え、それをどうするかを考えた末に選び取った道だった。だからこそ、今、家族とともに過ごす幸せな時間があるのは、まぎれもなく自分自身の選択の結果だ。そして、その選択をしたことに後悔はない。週末、こうして妻とデートしていられるということが物語るように素晴らしい選択であった。

人生において、何かを選べば、何かを手放すことになる。比較するものではなく、どちらが正しいという話でもない。ただ、私はこの道を選び、今ここにいる。そして、選択した道の上で新たな挑戦を続けていっている。

私の人生の年表には、レースの記録や、オートバイの技術探求が残るだろう。そしてその傍らには、家族との日々の思い出もまた、等しく刻まれていく。しかし、私にとっての挑戦は、どちらか一方を選ぶことではない。これからも、家族との時間を大切にしながら、オートバイのエンジンやライディングの探求を続けていく。そのバランスを模索しながら、自分らしい生き方を追求していくことこそが、私の人生の新たな挑戦なのだ。

さて、そろそろ35年目のシーズンインが始まる。この期待感冷めやらずだ。さて走ろう


次男のニューマシン

 ガレージの壁に長い間、吊るしてあったものを息子と取り出してきました。メンテナンスはほとんど不要なほどに綺麗な状態で保管されていたため、すぐに乗り出せました。16年前のマシンです。改めて調べてみると2004 Jamis Dakar Sportというバイク。販売当時の価格は新車で139,000円。高いですね。でも購入したのは2年落ちで2005年頃、記憶では7万円だったと思います。当時は子供もいないし残業はフルでするのが普通な世の中でしたので、たくさんのお小遣いを持っていたときの買い物ですねw

 2005年といえば、名古屋に転勤して妻との生活が始まり、当時私がダウンヒルを始めようと思っていた頃です。週末一緒に走ろうと思って準備したこの自転車ですが、実は購入して数ヶ月後に妻の妊娠が発覚して、何回かのっただけで乗ることができなくなって、部屋に置くことになってしまったものでした。

 それから16年が経過。次男が中学生になったので、小学生のときにのっていた24インチの子供用なんちゃってMTBは卒業させることにしました。このバイクを乗ることになりました。話はそれますが、次男は幼稚園時代はストライダーのレースに参戦し、そのあと長良川クリテリウムで3位入賞、富士見パノラマのレースに参加したりと、自転車とは本格的な付き合いがあります。実際にレースマシンは3台乗り継いで、4台目がこのJAMISとなります。

 新たなマシンを与えるに当たり、長男と同じに自転車の整備が自分でできる人になってもらおうと思っています。今回もガレージから取り出すときに、ホイールとペダルが外れていたので、取り付け方法を教えて自分でつけてもらいました。そうそうフレンチバルブの空気の入れ方も教えました。

 ほぼ未走行車といえども古いマシンなのでへたりもはやいでしょう。通常のバルブと違って空気も抜けるでしょう。そんなちっちゃな積み重ねですが、これから自転車の整備のしかたを徐々に教えていきたいと思います。そして近いうちにロングランを勧めて、サイクリングの楽しさを感じながら、二輪の楽しみを忘れられなくなるように育てたいと思います。